人を好きになること
人を好きになることは、何も悪いことじゃない。
その人を好きになったことでその人から嫌われてしまっても、それで人を好きになる自分の心が大嫌いになってしまっても、汚らわしく思えても、人を好きになることは何一つ悪くないんだ。
柚子も、団長も、メガネも、
柚子を好きになった私をまるでこの世に間違って生まれた異物のように扱ったけど、そんな人たちの思惑に流されてはいけない。
柚子を男の人として好きになったことを
団長をお兄ちゃんのように好きになったことを
恥じることは一つもなく
汚らわしいことは一つもなく
自信のない私のままで
この自分に自信がないけど
それでも言おう。
私は柚子が好きだ。
頭の中でたくさん馬鹿にする声や冷ややかな声が聞こえる。間違ってると言う声も聞こえる。
好きな人を好きと言うことほど
鎧を脱いで裸で舞台に立つ行為はなく
正義の斧を同じ舞台から振りかざされれば簡単に傷つくし
観客席から常識の石を投げられれば傷つく。
だから逃げたくて逃げたくて逃げたくて
自分を傷つく舞台から降ろしたくて
そのために批判の言葉を浴びせてなんとか降ろそうとするその人は
柚子の顔をした共演者の私
団長の顔をした観客席の私
あの団長と柚子の三人の話し合いの時
団長や柚子より一番私を傷つけたのは
堂々と恋の舞台に立ち続けようとする私を引きずり下ろしたかった私だ。
人を好きになることが
怖くて怖くてたまらなかった。
それでも止まらない自分の心を
時々呪いたくなった。
傷つくのがどうしても怖かった。
傷つきたくなかった。
でも、もう話せなくなった柚子のことが本当は今も大好きだし、好きな人を好きでいることが大好き。
人を好きになれる豊かな自分の心が
本当は私は大好きなのだ。