②団長の話
団長は、いかにも「ザ・団長」という感じの人だ。
いつもはネタに走る団VCではツッコミ役に回り場を盛り上げることが多い。
気の強い発言が多く、団長としての威厳や畏怖の念を意図して作っている。
行き過ぎた発言をする団員がいれば、わざとピリッとした発言をし場を凍らせる。
ゆえに団VCで団長に反論する団員はいない。
そういう見えない空気が笑いの多いVCの中でも常にあった。
「俺は団員のこと好きだから」と時々言う団長から、私は強い団への愛を感じていた。
それは少し強過ぎて重たいものであることも、薄々感じていた。
支配欲が強い。そしてそんなことはお首にも出さないが、この人は恐らく寂しがりだとも感じた。
とても頼もしく、愛情豊かで面倒見のいい団長。
私はそんな団長が大好きだった。
支配欲の強さも、団員への重い愛も、大好きだった。
私はよく、懐いた子犬のように団長にDMで「大好き」と言っていた。
本心だった。兄に懐く妹のような気持ちだった。
だけどこの人は、本人が周囲に見せる姿ほど強くもなく、団長業務能力に長けているわけでもないとわかったのは、私が入団して3ヶ月もした頃だった。
トラブルが起きた。
3ヶ月というのは、団内で特に毎日VCにいて発言力もある、その時団を盛り上げているメンバー、私や柚子やメガネや十姉妹君等がこぞって入団した時期から3ヶ月経ったことも意味した。
(そこに古参があまりいないことにも私は疑問を感じていた)
私が想いを寄せていた柚子が、団長を通して私にクレームを入れてきた。
そのクレームの内容は、自分にに異性としての好意を持たれることが不愉快だというものと、DMを送られることが迷惑だというものだった。