団の信者。宗教みたいに。
閉鎖された空間、つまり団で、
団長という人は絶対的な存在に見えた。
その団長が私が最初団が怖くて馴染めずにいたら、手を差し伸べて助けてくれた。
私はその優しさがいつまでも忘れられず
団長という絶対的存在を好いていたし崇拝していた。
ーー崇拝。
大袈裟な私の大袈裟な表現かと思い
口には出さず心の中で閉まっていた。
だけどある人に団や柚子との一連の出来事を話したら、「君はすっかりあの団の信者だったのに」なんて言われた。
外の人にもそう見えていた。
そうなんです。信者でした。
あの団を辞めて幾分か経つのに
今もふと団長が恋しくなってぼんやりすることがある。未だ私は洗脳が解けきっていない。
あの閉ざされた団VCにいる時
誰も団長に逆らえなかった。反論出来なかった。
笑いの絶えないVC。
その水面下で目に見えない逆らえない空気。
団長がいかにもな発言を仰々しく解くとき、
ああ、そうなんだなと、それが世の中の正解なんだなと、素直に全て聞き入れてしまう。
「団長を信じろ」
「団長は君を傷つける奴から守ってくれるよ!」
あの時柚子はそう言った。
それを言ってるその時まさに二人は私を傷つけていたのに、それが見えなかった柚子も信者だったのかな。
「君がまた誰かに依存しないように、団員全員と平等に仲良くしなさい。出来なければ解雇だよ」
と、私を依存から救う筋書きを一生懸命考えて提案してくれた愛の深い団長は、団長の提案に従うしか選択肢がなく私個人の問題を私個人で考え解決することを許さない、団長への依存促進コースの提案をくれた。
その発言は脅迫みたいで怖かったと、後でDMで柚子に言ったら「団長は立場上厳しいことも言わなければいけないから理解してあげて欲しい」と彼は言った。
順序が違う。その時理解すべきは調停役の心情ではない。考えるべきは当事者である私と柚子の心情だ。調停役を全う出来ないなら話に入ってきてはいけないし、当事者が調停役の顔色伺いをしてどうする。
「俺は誰にも依存したことがないから」と言っていた柚子は団長を信じきっていた。
「思考を放棄するな!」と私に怒っていた柚子は全く思考を放棄していた。
「ああ、あいつは俺のやり方に全部任せてくるから」団長は柚子のことをそう言った。
今日、新しい団にも上手く馴染めずにいた私に、友人が自分の管理するディスコサーバーに招待してくれた。
平たく言うなら、友人の作った団VCだ。
ただ団としてやらなければならない事が一つもない、ただお喋りするだけのVC。
そのディスコサーバーには、あの団長が発言した履歴が残っていた。団長はもうサーバーから脱退させたのでいないよと、友人は言った。
ここではその友人が王様のようなもの。
絶対的存在だった団長が、ここではいとも簡単に蹴落とされる。私はその様を見て、いや聞いて、洗脳の鎖が一つ解けた気がした。
団長はしがない一人間なんだと。
このサーバーではすぐに蹴り落とされるほど、価値がないのだと。
かたや何にも努力していない私は、簡単に招待され、VCに行けば知らないみんなが私を会話に入れてくれた。友人の大事な友人というだけで。
同じなんだ。
あの団は、ここでは簡単に蹴られたあの団長の作った小さな王国に過ぎないのだ。
あの人は本当に私に優しくしてくれただろうか?
それは団長の自己満足的行動であって、本当に私にとって必要な有難い行動だったのか?
そこまで執着するほど優しさをくれただろうか?
NOだ。
人並みの優しさと
自分の団を維持するための優しさをくれた。
それは私個人への優しさではないし、私個人にそうしてくれたことはほとんどない。
お兄ちゃんだのなんだのと執着したのは、私が単にそんなおままごとがしたかったからだ。
そんな兄は、いらない。
私も自分のサーバーであるおままごとから、団長を蹴っていいんだ。