日向さんと団長
ほんの2週間で色んなことが起こって、状況が変わりました。
私の恋人は遠い空から日を照らす日向さんではなく、手を伸ばせばいつもすぐそこにある静かな木のような、よっつめの団の元団長。
日向さんは自分から身を引いた。
それについて理由を聞くと、仕事と家庭の事情だと詳細を語るその人の暖かい声に、どこか信じきれない私がいる。
私を好いてくれているのは嘘ではないと思う。
彼が一生懸命真摯に語る言葉はその暖かくて優しい声と相まって、私の心を誘うのだけど、だけどどうしてもその甘美さに心を委ねることが出来ない。
なぜなのかよくわからない。
私が相手を疑い過ぎてると言えば否定できない。
それでもやはり信じきることが出来ない。
日向さんは甘くて優しい言葉を美しい声でくるんで私に渡してくれる。それはそれは一生懸命に。
だけど行動が必ずしも一致しない。
日向さんの行動を振り返っても、甘美な言葉とは裏腹なものが時々あって、それについて尋ねてみてもやはり甘美な言葉が返ってくるのだ。
例えば私が日向さんに会いに行ったときの、日向さんの譲らない「今晩は同じ部屋で泊まる」というワガママは、私の気持ちを置いてけぼりにしていて日向さん一人で焦ってるように見える。
早くヤリたいって言ってるように聞こえる。
団長は逆で、言葉少なで自分から多くを語らず、話すことがうまくもなく、女性に慣れてない感じもある。
だけどこの人の少ない言葉は真っ直ぐで、美しい言葉や甘い声もあまりなく言葉と行動が一致する。
根のないキラキラしたお空の日向さんと、どっしり根の張った静かな団長。私はもうキラキラを追いかけるだけのボロボロに傷つく恋愛をする気力はない。
私の思い込みや恋愛初期の盲目的好意なんかも混ざっているとは思うが、直感的に団長の方が信じられるのだ。
団長といる方が穏やかに幸せを感じている自分がいて、日向さんといる時は甘美さにうっとりするものの心身を委ねられない不安な自分がいる。
だから日向さんは恋愛ではなく友達がいいなと思った。
なぜ団長が恋人になったのかは次に書こうと思う。