⑥団長との話し合いニ(団長と柚子との三者面談)
団長は二つ目の話を出してきた。
それが柚子が私から送られるDM(編成質問が多かった)が負担になっている、私から異性として好意を寄せられるのも嫌だ、というものだった。
私は柚子に告白をしたこともなかった。
するつもりもなかった。
柚子が女性嫌いなのを知っていたからだ。
秘めていたかった。
本人にさえ知られたくなかった。
(きっと態度に出過ぎていたのかもしれない。)
それが、告白もする前から全く関係ない、団の管理者の口から、「団の問題」として晒された。
惨め。
辱め。
自分の心の奥の人に知られたくない秘密の場所を、いきなり関係のない警察がやってきて無理やりパンツを脱がされ
「はい、これが悪しき問題です、排除しましょう」
と陰部を指差され写真を撮られ晒され悪い物という烙印を押されたような気持ち。
柚子が何度私に「DMをやめてね」と言っても私が執拗に送ることを辞めなかったなら、警察と言う名の団長をだすのもわかるが、
柚子は一度たりとも私にNOを言ったこともなく、むしろ自分を頼っていいよと助長することを言ったり、そこまでお願いしてないよという量と速さで返信をくれていたのは彼だ。
あまりにも納得がいかなかった。
しかしそれを認識出来ないほど、私は感情的にパニックを起こした。
それは、この団長との話し合いの後、柚子も混ぜて三人で話し合いになった時、団長から、
「これからは柚子にDMを送るのをやめること。
編成相談をしたいなら団Discordで全員に対して質問すること。
君は人見知りだからまた特定の団員にだけ依存するといけないから、同じ問題が起こらないように、団員30人全員と平等に仲良くするよう努力すること。
君がそのために頑張るというなら、俺は協力を惜しまない。だけど君がその努力もしないなら、俺は君を解雇しなければいけないからね?」
こう忠告された。
え?
かいこ??
え????
そもそも柚子が私にNOと言えばよかっただけでは?
その柚子は何の解雇通告もされなかった。
泣きじゃくりながら私が
「全員と平等に仲良くなんて出来ない。」(ていうか人間相性があるのにそんなこと出来る人間この世にいないでしょ。あなたらも出来てないでしょ)と言うと、柚子は
「努力をする姿勢を見せろ。簡単に諦めるな」と強い口調で責めてきた。(え??あなたがNOと一言言えば済んだ問題なんだけどなぜ私が責められる???)
私はとにかくパニックを起こして泣きながら何一つ冷静には考えられない状態だった。
いきなり解雇通告をされたこと、
その内容が全くの理不尽さに満ちているのに、そのことに団長も柚子も何一つ気づかないこと、
私が良かれと思って送っていた柚子への質問DMが柚子の負担になってたこと、
とにかく柚子を好きになった女の私が汚らわしく全ての元凶ということ(考え過ぎだけどこの時はパニックを起こしていたのでこうとしか思えなかった)。
私は自分が全て悪い、
生まれてきたことが悪い、
存在したことが悪い、
女であることが悪い、
それらが全て柚子を傷つけていた存在そのものが悪、
そう思った。
恐怖とパニックでそういう極端な思考に陥った。
いきなり関係ない警察が来てパンツ下ろされあそこ晒されて挙句理不尽な要求突き付けられ出来なければ解雇だなんて言われれば、誰だって怯えると思う。
泣きじゃくる私が「私は団長のことも怖い…」と言うと、
柚子は「団長を信じろ!傷つける人がいても団長は守ってくれるよ」と熱く言った。
この人何言ってるんだろうと思った。
今まさに私は団長とあなたからズタボロに傷つけられてるよ。
二人は私のためを想って差し伸べてくれたのかもしれないその愛の手が、力を込めすぎるあまり私の首を絞めてることが見えてなかった。
私からすれば、元はと言えばただ柚子がNOと言えず生まれた問題なのに、
私に全て問題があるような言われをして理不尽な要求を突き付けられ、俺の言う通りに出来ないなら解雇ねと脅迫されたように感じた。
頑として自分のその主張を述べることが出来れば話は万が一にも変わったかもしれないが、私はこの主張を自分の中で冷静に出すのに二週間以上かかった。
それまではただただ自分が全て悪いと泣いていた。発作のように泣いていた。
なんとなくこの話し合いの時
団長は柚子の顔色を伺っているように感じた。
私と二人の話し合いの時の団長はもっと落ち着いていて優しかった。私の言葉に耳を傾けてくれた。
なぜか柚子が入ってきて団長の空気が変わった。
それはこの時の柚子にも似たような空気を感じた。
柚子は団長の顔色を伺うというより、団長を庇っているような、守ろうとしているような、そんな空気を感じた。
ドロリとしている。
そう感じた。
団長は泣き続け謝り続ける私を見て話し合い続行不可と判断し、とりあえず話し合いはやめてしばらく一人で冷静に考えてみてねと、私を解放した。
しかしもう無理だった。
私はこの一時間後、泣きながら団を辞めた。
(8月15日の記事)