日向さんの、ごめんね
ごめんね、と
日向さんは私によく言う。
「いっぱい我慢させてごめんね」と
私に言ったその言葉は、他の単語より温度を感じた。
みんなのいるVCでも私によそよそしくなった日向さん。まるで距離を置かれているようで悲しかった。嫌われてしまったのかと。
「いっぱい我慢させてごめんね」
私は「とても我慢してます」とは言っていない。言っていないけどとても我慢していた。
良い子でいた。
大変な日向さんの負担にならないように、言いたいことを控え、大事な話もDMで済ませ、感情的になりすぎないよう、極力短文で済むように努めた。
笑顔で優しい言葉をかけるようにした。
だけど内心は荒れていた。
どうしてそんなにも急に態度が変わったの?
好きと言ったあの言葉は嘘だったの?
嫌いになったの?
たくさん泣いて、色んな感情が私の内で荒れた。
それを、DMではなく直接話させて欲しいとワガママを言うことにした。
重たい女、めんどくさい女、今大変なのに構ってる余裕ないのにな、、、なんて思われるのかなと怖かったけど、言った。
すんなりオッケーしてくれた。
直接話して、あの日向さんの暖かい声に包まれると安心して、それから自分の気持ちを話して、すっかり落ち着いた。
「全部俺の都合で振り回して、たくさん我慢してくれてたんだよね。本当にごめんね」
「ほんとすっごい泣いたんだからね」
と怒って見せた。わざと少し可愛く言った。
それから「いいよ」と言った。
心が軽くなった。
日向さんに直接話したいと言えたこと、いっぱい泣いたんだよって言えたこと。
それを日向さんは真摯に受け止めてくれたこと。
私が知ってる男の人は、こんなこと言ったら逆ギレするか無視するかだったのにな。
日向さんはちゃんと受け止めてくれる。
付き合えないけど私を大事に扱ってくれる。
こういう男性がこの世にはいるんだ。
話し合って、たくさん話して、日向さんの愚痴も聞いて、私と日向さんの間にあった氷の壁がなくなった気がした。
数時間後に日向さんから「一緒に今からグラブルやりませんか?」とDMが来た。嬉しかった。
日向さんは私によく謝る。
そんなに謝らなくて大丈夫だよ、と言いたくなるけど、そうやっていつも私の心を想ってくれる日向ぼっこしたお布団のような彼の優しさを、私は一人心の中で反芻している。
こんな人と生涯添い遂げられたらな。