団長になった経緯。2
少し話を戻す。
私はAが好きになっていた。
豪快で力強く、面白くて発言力もあって、年が近い私にはない大きな包容力も感じた。
Aには妻子がいた。
好きになった罪悪感が苦しかった。
しかしゲーム内でみんなで話すだけならいいだろうと思い、二人きりになることは避けた。
しかし二人きりを避けたことが後のトラブルへと発展する。
私たち団員はあまりに仲良くなり過ぎて
グループLINEをしていた。
それはそれは楽しくてたまらなかった。
スマホの黄緑色の窓を開けば
そこにいつもみんながいた。
いつも誰かが会話していた。
私はみんなを家族みたいに思っていた。
この頃私は社会復帰を試みて失敗する。
アルバイトにつこうとしたものの落ちたのだ。
落ちたことはまだしも
それより私は働くことが怖くて怖くて怖くてたまらなかったのだ。
みんなの前でボロボロに泣きながら
その気持ちを吐露していた。
みんな優しく本当に真剣に受け止めてくれた。
どんなに居心地のいい空間だったか
想像に難くないと思う。
そう感じていたのは私だけではなく
みんな同じだった。
しかしあまりにスマホでLINEばかりしていたために、Aは奥さんから浮気を疑われ、グループLINEを去ることになった。
「ここはあまりに甘美的過ぎる。竜宮城のようにな。」
Aはそう言って、最悪グラブルさえ辞めなければならないかもと言った。
私はもうAには会えないのかもしれないと思い、他のメンバーがいる前で、Aに想いを告げた。
Aは「俺もまだまだ捨てたもんじゃないな!」と豪快に笑って、グループLINEから去った。
私もショックが大きく、グループLINEをやめた。
しかしAはグラブルを辞めなかった。
トラブルで静かになっていた団チャに彼はいた。
この頃の私にはわからなかったが、多分彼は私に好きと言われたことがまんざらでもなかった。
周りの男友達には「彼女は迷惑だ」などと漏らしていたようだが、何時間も団チャで私と話していた。
その微妙な空気感に、他の団員も入れなかったそうで、「ああいう話は二人きりでやりなさい」と団員に後に言われた。
しかし別の団員には「既婚者だから二人きりになってはいけないよ」と言われる。
誰かのために何をやってもちぐはぐになる。
それがこの頃の団内の印象だ。
そんな中副団長が団を抜け、Aが副団長に指名される。
副団長Aもまた、団の寂しい空気を何とか変えるんだ!と頑張り出し、頼まれもしないのにヤル気のある新入団員を集めに行く。
その行動力は眼を見張るものがあった。
あっという間に人を集め、私はAのその行動力がカッコよくてたまらなく見えた。
Aはある入団希望者のために、団のA Tを変えれないか?!とみんなに提案し、強行しかける。
Aは団員みんなの反対を受けた。
Aは心が折れたようだった。
私もまた、心が折れた。
それから3時間ほどしてAは団チャで言う。
「俺は新しく自分の団を作りたい」と。
仲の良かった副団長二人が辞め
さらにAも辞めると言い出し
私はついに寂しさの我慢の限界が来てパニックを起こした。
「置いていかれるのはもう嫌だ。無理」
Aは私を連れてはいけない、誰も引き抜くことはしないと言った。
それから深夜の団チャで私たちは揉める。
二人きりでやれば良かったのかもしれないが、既婚者故に出来ない。
Aも追い詰められ、団チャで私がニートであることを公開で責め正し始めた。
仕事に就けないなら連れてはいかないと。
私はボロボロになり、団チャの空気もボロボロになった。
早朝彼は去り、そのまま黙って団を辞めた。