団長になった経緯。1
私が団長になった経緯を書こうと思う。
一年半ほど所属した団にいた時のこと。
この団は非常にまったりした団で、最初は古戦場もCクラスだった。
みんなそこまでグラブル狂ではなかった。
私もそうだった。
だいたい毎日ログインはするものの、イベント報酬も億劫で回収しきれないことはよくあった。
私がその団に初めて入った日、団長が「マイペースでやっていきましょう」と挨拶欄にメッセージをくれた。
私はそれが嬉しくて、その団を好きになった。
たまに団チャで誰かがグラブルのことを話す。古戦場になると一致団結する。
そんな団だった。心地良かった。
ある春の日、Aという男が入団した。
彼は今までの団員とは全く違うタイプで、入団早々にして「未ログイン100日の団員がいますが、必要ありますか?」と団チャで団長に意見した。
私は団長を傷つけようとするAが許せず反論した。
未ログイン100日の団員、それは元々その団の団長だった人だ。
きっとグラブルに飽きていなくなって、たまたま機械に自動的に団長にされたのがその時の団長だった。
なので、団長を辞めたいと時々漏らしていたし、そんな団長を支えたいと私は思った。
健気に未ログイン100日越えの元団長の帰りを待っていた団長は、Aの意見を汲み取り、元団長を解雇した。
Aはそれからも団に全く違う大風を吹き込む、春の嵐のような男だった。
それまで静かでゲームの話しかしなかった団チャで、プライベートな話を朝晩問わず四六時中するようになったのはAだ。
最初は私は懐疑的にそれを見ていたが、一人また一人と団員がAの会話の嵐に入っていった。
それは実に楽しそうだった。
豆電球一つ静かについていた居間に、大きくて豪快でゴウゴウと燃える暖炉をドカン!と置いたようだった。
私もいつしかその会話に混ざるようになった。
団員全てとは言わないが、3分の1は入れ替わり立ち替わり会話に参加していた。
私たちは日に日に仲良くなっていった。
とても楽しかった。
しかし一人だけ、所謂空気を読めない、人の苛立つことを平気で言う団員がいた。
私は彼の言葉に度々傷つき、副団長に相談していた。相談して愚痴を吐ければそれで良かった。
しかし男女の価値観の違いだろうか、副団長は何とか解決しなければと考えるようになっていた。
この副団長もまた、責任感や使命感が強過ぎたのだ。
そんな一人一人の想いのすれ違いが重なり、大きなトラブルになり、団は崩壊しかけた。
みんな団のことを強く愛していた。
しかしその想いがボタンのかけ違いのようにみんなすれ違っていた。
私たちは四六時中笑って会話していたのに、そんな一番大切なことを話さなかった。
怖くて話せなかった。
それから間も無くして副団長は団を辞める。
副団長の席が空いて、以前から発言力のあったAが副団長に指名された。
「今まで通りでいいですからね」
と団長。
その後の忘れもしない彼の第一声。
「空回りしないよう俺なりに頑張ります」
Aはこの数時間後
団を良くしようと盛大に空回りをし、団員の反発を買い、翌日には団を辞めることになる。